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生と性 [book]

 著者は、なんと私の知人だ。光栄にも、かつて同じ団体で仕事をさせていただいていた。同僚というよりは大先輩だが、いつも、同じ目線で問題に取り組んでくださる謙遜な人だった。本が出版されたことは、前から知っていたが、なんとなく読みそびれていたがようやく読むことができた。
 「性」というテーマは、近年、キリスト教界でも積極的に取り上げられている分野のように思える。間違った情報や誘惑が溢れている時代なので必然と思える。私も、かなり時間をかけて取り組んだことがあるテーマだ。小さな文章を寄稿したこともあるし、いくつかの集会で話をさせていただいたこともある。しかし、今、振り返ると、実に貧しい内容であったと反省するばかりである。
          
                      The良書です
 このテーマは実にセンシティブである。そして尊いテーマである。主に伝える対象は若者。彼らにこのテーマを伝えるためにどのようなアプローチを取るのか?この点が重要だ。多くの場合、若者に届けたいあまりに、やや軽いノリで、ともすると軽薄と思える伝達方法を使いがちだ。この手法はある程度有効だ。とにかく、若者は喜ぶ。そして「わかりやすい!」との賞賛を受ける。しかし、この手法では、「性」そのものがもつ気高さをゆがめてしまう危険性がある。私が失敗したと反省する点はまず、この部分だ。
 ところが本書は、「生、性、命」というテーマそのものが持つ尊さを損なわない、アプローチ、文章が貫かれている。なおかつ、平易な文章であり、百ページ強の中にコンパクトにまとめられている。もちろん、著者の人格に寄るところも大きいが、聖書からこれらのテーマを扱うというアプローチが成功している。そして、さらに私が失敗したと反省している部分である。
 キリスト教の書物なのだから聖書からテーマを扱うのは当然のことではあるが、多くの場合、特に「性」というテーマの場合、「性」の話をするために聖書を持ち出すという、聖書をつまみ食いするような手法が使われている。これでは、受け手は「性のことがよくわかった。」という理解に止まってしまう。
 しかし、本書は創世記を丁寧に講解しながら、「生と性」という主題を引き出している。すると、受け手は「聖書が良くわかった」というレベルを経由して「性のことがよく分かった。」という地点にたどり着くことできる。実は、このような本、メッセージはほとんど無いのだ。
 この本は、一気に読むことを勧める。先にも書いたように平易な文章で百ページ強。読むのが遅い人でも2時間もあれば充分だろう。しかし、内容は濃い。一読では消化できない。なので、何度も読み返して発見に発見を重ねることができる本である。
 推敲を重ねられたと思うこの本を批判する点は、ほとんど無いのだが、あえて言うのなら、それでも難しいということ。平易と書いたので矛盾と思われるかもしれない。おそらく、この本の一番のターゲットは未婚の若者だろう。10年近く大学生伝道をしてきた私の感覚のみで、それ以外の根拠の無いので恐縮だが、ターゲットの20パーセントの若者はこの本を完読できないだろう。そして60パーセントは、かなりがんばって読める人たちだと思う。本の批判ではなく、若者の読解力の嘆きになってしまった。
 しかし、高いクオリティと深い内容を持ちながら、ここまで平易な文章であり、しかもコンパクトな「生と性」。タイトルもへブル的な言葉遊びを連想させる良書である。
 


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