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獣の奏者「探求編」「完結編」 [book]

 ファンタジーが苦手な私が夢中になって読んだのが「獣の奏者」。その続編である「探求編」と「完結編」が発売され、図書館に予約を入れたが数ヶ月待たされてようやく順番がまわって来た。
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 この小説はエリンという数奇な運命を辿る一人の女性の生涯を中心に、権力を求めながら武装化し破滅へと向かっていく人間の本性。間違えとわかっていても時代の流れに抗えない歴史性。自然界を支配しているように見えて圧倒的な自然の力の前には全く無力な人間の姿を、ファンタジーという媒介を経ながら、卓越した文章力でリアルに描ききった傑作である。
 この続編が必要なのかという点は賛否あると思う。私も、前作のラストシーンが大好きだったのであのまま終わっていても完璧だと思った。今もあのラストはほぼ完璧だと思うが、続編もやはりすごかった。早く読み進んで最後が知りたいという思いと、読み終わってしまったら寂しくなるだろうという葛藤を感じながら読んだ。ストーリーはシンプルだが、世界観が広大で、読み終わっても色々なことを考えてしまう。
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獣の奏者 [book]

 どうもファンタジーというのは昔から苦手である。何の説明もなく、にわかに妖精が現れたりするのはどうなのだ?と感じてしまうことが多いのだ。そんな、私であるがとりつかれたように、ハイスピードで一気に読んでしまったのがこの「獣の奏者・闘蛇編」と「獣の奏者・王獣編」である。
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 この物語はNHK教育テレビにてアニメ化されているので、子どもたちが見ていたのだが、こんな原作があるなんて知らなかった。
 作者の上橋菜穂子という人は、プロフィールを見ると大学の先生ということ。大学の先生がこんな物語を考えたのか?と思ったが「指輪物語」のトールキンだって、「ナルニア国物語」のC.S.ルイスだって大学の先生だ。ファンジーというのは昔から大学の先生が副業で生み出すものなのだ(?)。
 この作者の文章力は卓越している。そもそも、荒唐無稽なファンタジーの世界に説得力を持たせるには圧倒的な文章力が必要なのだ。それによって、空想でありながら世界観と歴史観に立体的なリアリティを持たせることに成功している。
 もちろん、ナウシカの影響とかあると思うが、このファンタジーはどことなくアジアっぽいところに、オリジナリティを感じる。自然崇拝的な思想は、私のキリスト教的世界観とは相容れないけれど、これは見事な作品だ。
 最近、続編が刊行された。ものすごく気になるが、ラストシーンも圧巻だったので、続きの必要性にはちょっと疑問。その疑問を吹き飛ばす続編であることを期待したい。
 あと、これもナンセンスと思いつつ、この作品をジブリで映画化して欲しい。王獣が空を飛ぶシーンをジブリ映像で見てみたいものだ。
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灯のうるむ頃 [book]

 この本を最初に読んだのはたぶん、高校生の頃だったと思う。あの頃、面白いと思った本はよく覚えていて、今読み返しても、やはり面白い。
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 遠藤周作の中間小説

 かつて、学生伝道をしてた頃、この本を医学部の学生に読ませたいと思った。この本に出てくる癌の特効薬というのは、ちょっと荒唐無稽な部分があると思うが、もちろん、読んで欲しい部分はそんなところではない。主人公の医師の患者に向かう姿勢、ここを読んで欲しいのだ。
 やはり、一気に読み終えてしまった。決してハッピーエンドではないが読み終えた充実感はさすが。
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こころ [book]

 私は夏目漱石が好きだ。好きだなどと公言するのはちょっと恥ずかしい。というのも、そんなに夏目漱石の作品を読み込んでいないからだ。
 『こころ』を読んだのは確か高校生の時だったと思う。大まかなストーリーは覚えているが、漠然とすごく面白かったという記憶しかなかった。ちょっと読み始めたら止まらなくなってしまい、今日はスタバで仕事をさぼって読みふけってしまった。夏目漱石恐るべし。
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読み返すのは何年ぶりかな?

 あの頃(高校生)の頃は、手紙を受け取った私の目線で自然に読んでいたように思うが、今は、なんだが先生目線で読んでしまった。
 もちろん、すごく面白かったが、冷静に考えるとそんなに面白いストーリーではないかもしれない。たぶん、ここであらすじを書いても面白くないと思う。夏目漱石の天才的な文章力と構成力が、すさまじく面白くしているのだと思った。もう、「こころ」というタイトルが反則的に秀逸。
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真実一路 [book]

 またまた、本棚のインテリアと化していた文庫本を制覇することに成功した。そんな大それたことではないが…。この本も、きっと中学生の頃に買ったような気がする。とにかく、文学青年にあこがれていたので、手始めに本棚に有名作家の代表作と思われるものを並べて、満足していたのだが、結局、ほとんど読む事もなく、文学青年になることもなく、バブル期にアミューズメント化した大学でモラトリアム期を過ごし、つまらない大人になってしまった。反省…。
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 さて、「真実一路」というタイトルは抜群に良い。きっと、タイトルに惹かれて購入したと思われる。正岡子規の言葉にインスパイアされて山本有三がタイトルにしたこの言葉は実に感慨深い。
 真実を貫くことが尊いことと思いながら、真実に傷ついていく人たち。そして、真実を隠そうとする大人と、イノセントな少年との衝突。特に、少年の心の描写が秀逸。
 健全な明るい文章ではあるが、ストーリーはかなり暗い。でも、読んでよかった。
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風立ちぬ・美しい村 [book]

 受験の時は「文学史」で点数を稼がせてもらった。作者と代表作を線で結ぶ問題とか、書き出しで作品名を答えたりする問題だ。はっきり言って、問題集で暗記しただけで、作品なんて読んだ事がなかった。それなのに、いかにも読んだかのように試験で点数を稼いできた後ろめたさもあって、文庫本を買って申し訳程度に机の上に並べておいた。
 いまだに、軽い罪悪感を覚えるので、最近、本棚から引っ張り出して休み時間に読んでみたりする。今回本棚から抜き取られたのは、堀辰雄の「風立ちぬ・美しい村」。
            
                   文学史の出題作品をまた一つ制覇
 シンプルで透明感のあるタイトルが印象深い。この堀辰雄という作家は文章を書くのが好きなのだろう。作家なのだから当然かもしれないが。もっと嫌味っぽく言うなら小説を書いている自分が好きなのではないだろうか?そして、当時としてはハイカラな横文字を積極的に取り入れているのも良くわかる。でも、私にはかなり退屈な小説だった。堀辰雄ファンには申し訳ないが、私の感性とはかなり合わないようだ。


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斜陽 [book]

 実は太宰治はほとんど読んだ事がなかった。中学生の頃「走れメロス」を読み。学生時代に文学の授業で「津軽」を読まされただけ。妻の祖父は元共産主義者で太宰治の友人だったらしいが、私の人生と太宰治とはそれくらいの接点だ(なんのこっちゃ)。自称・元文学青年だったのに、実は太宰とはほとんど関わりが無い。青森県・金木町の斜陽館には観光に行ったことがある。そこで頬杖をつきながらコーヒーを飲み「生まれてきてすいません」とつぶやいたこともあったが、太宰治は、ほとんど読んだことがない。
           
                苦節○○年。ついに、太宰を読みました。
 四半世紀以上も本棚のインテリアと化していた「斜陽」をついに読んだ。「こんな話だったのか」というのが率直な感想。一番予想外だったのは主人公が女性だったということか。太宰に迎合している人たちの気持ちが僅かながら分かったような気がした。とにかく、文書の美しさというのか繊細さというのか、天才だという言われるのも分からないわけではない。デカダンというのか、エロチシズムというのか、頽廃的というのか、耽美的というのか、そんなものも何となくわかったような気になった。でもうまく説明できない。
 しかしながら、天才的な文章で退廃的な世界を芸術として確立してしまうことに違和感を覚える。やはり芸術とは普遍的に美しいものであるべきではないだろうか?
 太宰の世界が魅力的であることは少しわかった気がしたが、私は好きではない。


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あした来る人 [book]

 長い間、本棚に置き去りにされインテリアと化していた本をついに読んだ。井上靖との出会いは、中学一年生のときの国語の教科書に「赤い実」(『しろばんば』より抜粋)という作品が載ってたから。初恋を瑞々しく描いたこの話が私は大好きだった。そして、井上靖の小説を何冊か買ってきた。
 その頃、「好きな作家」というのが欲しかった。同級生達は、赤川次郎とか、片岡義男とかに夢中になっていた。なんだか、みんなと同じというのも芸がないし、一・二冊読んでみたが、それほど共感もしなかった。そこで、井上靖を好きになってみることにした。
             
                      苦節二十数年、ついに完読
 しかし、井上靖の多くの作品は中学生の私には難しすぎた。「あした来る人」というのは、タイトルに惹かれて買ったのだが、「朝日新聞」に連載されていたということもあって明らかに大人の読み物だ。あの頃の私には、ページをめくることも困難な本だった。
 さて、時が流れ何十年ぶりに「あした来る人」を手にとってみた。基本的には娯楽小説だが、井上靖らしい巧みな描写が楽しかった。六十代の老紳士の視点で不器用ながらも、懸命に、失敗しながら生きる二十代、三十代の若者たちを「あした来る人」として見つめる。
 特に、必読の書ではないが、ちょっとした暇つぶしにはなる。


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生と性 [book]

 著者は、なんと私の知人だ。光栄にも、かつて同じ団体で仕事をさせていただいていた。同僚というよりは大先輩だが、いつも、同じ目線で問題に取り組んでくださる謙遜な人だった。本が出版されたことは、前から知っていたが、なんとなく読みそびれていたがようやく読むことができた。
 「性」というテーマは、近年、キリスト教界でも積極的に取り上げられている分野のように思える。間違った情報や誘惑が溢れている時代なので必然と思える。私も、かなり時間をかけて取り組んだことがあるテーマだ。小さな文章を寄稿したこともあるし、いくつかの集会で話をさせていただいたこともある。しかし、今、振り返ると、実に貧しい内容であったと反省するばかりである。
          
                      The良書です
 このテーマは実にセンシティブである。そして尊いテーマである。主に伝える対象は若者。彼らにこのテーマを伝えるためにどのようなアプローチを取るのか?この点が重要だ。多くの場合、若者に届けたいあまりに、やや軽いノリで、ともすると軽薄と思える伝達方法を使いがちだ。この手法はある程度有効だ。とにかく、若者は喜ぶ。そして「わかりやすい!」との賞賛を受ける。しかし、この手法では、「性」そのものがもつ気高さをゆがめてしまう危険性がある。私が失敗したと反省する点はまず、この部分だ。
 ところが本書は、「生、性、命」というテーマそのものが持つ尊さを損なわない、アプローチ、文章が貫かれている。なおかつ、平易な文章であり、百ページ強の中にコンパクトにまとめられている。もちろん、著者の人格に寄るところも大きいが、聖書からこれらのテーマを扱うというアプローチが成功している。そして、さらに私が失敗したと反省している部分である。
 キリスト教の書物なのだから聖書からテーマを扱うのは当然のことではあるが、多くの場合、特に「性」というテーマの場合、「性」の話をするために聖書を持ち出すという、聖書をつまみ食いするような手法が使われている。これでは、受け手は「性のことがよくわかった。」という理解に止まってしまう。
 しかし、本書は創世記を丁寧に講解しながら、「生と性」という主題を引き出している。すると、受け手は「聖書が良くわかった」というレベルを経由して「性のことがよく分かった。」という地点にたどり着くことできる。実は、このような本、メッセージはほとんど無いのだ。
 この本は、一気に読むことを勧める。先にも書いたように平易な文章で百ページ強。読むのが遅い人でも2時間もあれば充分だろう。しかし、内容は濃い。一読では消化できない。なので、何度も読み返して発見に発見を重ねることができる本である。
 推敲を重ねられたと思うこの本を批判する点は、ほとんど無いのだが、あえて言うのなら、それでも難しいということ。平易と書いたので矛盾と思われるかもしれない。おそらく、この本の一番のターゲットは未婚の若者だろう。10年近く大学生伝道をしてきた私の感覚のみで、それ以外の根拠の無いので恐縮だが、ターゲットの20パーセントの若者はこの本を完読できないだろう。そして60パーセントは、かなりがんばって読める人たちだと思う。本の批判ではなく、若者の読解力の嘆きになってしまった。
 しかし、高いクオリティと深い内容を持ちながら、ここまで平易な文章であり、しかもコンパクトな「生と性」。タイトルもへブル的な言葉遊びを連想させる良書である。
 


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氷壁 [book]

 久々に読み応えのある一冊だった。
 井上靖は大好きな作家の一人。大好きと公言する割には、あまり作品を読んでいないのでちょっと恥ずかしいが、やはり、井上靖は好きな作家の一人だと思った。とにかく、文章が上手い。何気ない細かい描写も、じっくり読めば読むほど、小説の世界の色や匂いを感じるような錯覚を覚える。こんな時は、日本語で原文を読める日本人であって幸せだと思う。
 井上靖は中学生の時に夢中になった。彼の自叙伝である「しろばんば」の一部が国語の教科書に掲載されていたことがきっかけだった。その舞台となった伊豆・湯ヶ島にはいつか行きたいと思いながらもその夢はまだ実現していない。
          
                これは大人の青春小説です。
 「氷壁」はたぶん、中学生か高校生の時に購入したものだと思うが、その時は読めなかった。これは大人の小説なのだ。その頃に読まなくて良かった。そして、大人の小説でありながら、大人の青春小説なのだ。久しぶりに読書に夢中になった。


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