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遠藤周作の世界 [book]

 恥ずかしながら、もともと読書量は少ない方だが、それでも一ヶ月に一冊くらいは本を読みたいと思っている。父から誕生日プレゼントにもらった「遠藤周作の世界」(兼子盾夫著)を読んだ。遠藤周作の本は好きだが、遠藤周作についてはそれほど興味がなかったのだが、なかなか楽しめる一冊だった。
          
               タイトルは大げさだが興味深い一冊でした
 著者はカトリックの視点を持ちながら、「深い河」「沈黙」など遠藤の代表作から遠藤のキリスト教理解、メッセージを解き明かしている。「遠藤周作の世界」というタイトルはかなり大げさで、世界のほんの一部ではあるが、それでも面白い本だった。
 遠藤の死後発表された「満潮の時刻」のあとがきが秀逸だったので、遠藤の作品解説に興味を持ち始めたのだが、そのあとがきを書いていた山根道公氏がこの本でもあとがきを書いていたことも付け加えておく。


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死海のほとり [book]

 「小説聖書」というベストセラーがあったが、「聖書小説」というべき作品。若き日に信仰を持っていたが、戦時下の弾圧に屈し信仰を棄てた小説家「私」がエルサレムの友人を訪ねる旅の出来事の間に、イエス・キリストの物語が織り成されている。文豪・遠藤周作の力量を感じさせるレイアウト。しかし、私の抱いているイエス像とはかけ離れており、最後まで違和感を拭い去ることはできなかった。
         
          立場の違いからか違和感を拭い去ることができなかった
 カトリックの視点、自由主義的なイエス像。若い頃の私なら、激しく嫌悪したかもしれないが、さらりと読み通せたのは大人になったからなのか、それとも、なまぬるくひよってしまったからなのだろうか。


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深い河~ディープ・リバー~ [book]

 大好きな遠藤周作の晩年の秀作。異なった背景、生き様をもった人たちが、人生の意味を求めてインドを目指す。点のようなストーリーが見事に絡まってゆく手法は流石。特に、大津というカトリックの神学生が発する「ぼくが神を棄てようとしても…神はぼくを棄てないのです。」というセリフが印象的。遠藤周作のキリスト教観がこの一言に集約されているよう思える。
          
                 遠藤周作の晩年の作品を味わう
 ご存知のように遠藤周作は「カトリック作家」という肩書きで語られることが多い。キリスト教色の強い作品を数多く生み出しているので、ある意味、それは必然であると思う。そして、本人もそのような使命感を持っていたとも思う。しかし、遠藤は信者ではあったが、神学者や教職者であったわけではない。にもかかわらず、その作品が作家としての評価に留まらず、神学的批評の対象にされることは有名税かもしれないが、個人的には気の毒に思える。それだけ影響力があったということだと思う。おそらく、カトリック、いやキリスト教界からの風当たりも強かったはずだ。にも関わらず、晩年まで、汎神論的な要素や輪廻転生の思想などを興味深く取り入れながら作品を発表し続けた遠藤周作のエネルギーと才能には敬服する。


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ピエロの歌 [book]

 私には、いつか本を出してみたいという密かな野望がある。しかし、絶対にこんな表紙にはしないだろう、と思うのが、最近読んだ「ピエロの歌」だ。しかし、表紙のセンスに反して、とっても面白い本だった。
           
                     この表紙は???
 純愛長編ということだが、いかに人が恋におぼれ、盲目になり、落ちてゆくか。そして回復していくか。重なり合ういくつもの人物ストーリーを束にまとめていく、いつもながらの遠藤周作の文章構成が秀逸。そして、目に浮かぶような何人もの登場人物。
 本当に娯楽小説だが、やはり、遠藤周作はおもしろい。
 


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蛍・納屋を焼く・その他の短編 [book]

 何人もの友人が村上春樹を絶賛していた。同じように村上龍の賛辞も聞いてきた。私がへそ曲りだからかもしれないが、全く関心なく過ごしてきた。そもそも、同じ苗字というだけで村上春樹と村上龍を語ること自体、両者のファンからは甚だ不愉快なことなのかもしれない。言い訳のようだが、全く読んだ事がないわけではない。学生時代、本屋に行けば入り口には緑と赤のハードカバーの本が積み上げられていた。その「ノルウェイの森」は読んだ。村上龍は「限りなく透明に近きブルー」を読んだ。でも、両方とも私の琴線には触れなかった。それ以来、村上春樹をすすめられても、村上龍をすすめられても、心は動かない。
 なぜか、私の本棚に村上春樹の「蛍・納屋を焼く・その他の短編」があった。昔、自分で買ったのかもしれないし、村上春樹の大ファンの友人がくれたかもしれない。その辺は全く思い出せない。しかし、偏見は良くない。自分も年を重ねたし、新鮮な気持ちで読んでみようと思った。
           
 一読して、村上春樹が好きだという人の気持ちが少しは分かったような気がする。私が言うことではないが、本当に文章が上手い。もっと言うなら文章が美しい。読んでいて心地よい。文才とはこういう人のためにある言葉だな、とも思える。しかし、学生時代に「ノルウェイの森」を読んだ時と、読み終えた心境はあまり変わらない。どう言ったらいいのだろう?私は美しい文章よりも、美しいストーリーを読みたい。文章の美しさに感心するよりも、圧倒的なストーリーに感動したい。そんな不全感が同じように残った。


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海と毒薬 [book]

 遠藤周作は大好きな作家の一人。作品の80%は読んでいると思う。しかし、恥ずかしながら代表作の「海と毒薬」は未読だった。実は、これまで4回くらい読みかけていて、最初の30ページくらいは事細かに覚えているほどなのだが、なぜか、読み終えていなかった作品。
          
               学生時代に買った本をやっと読みました。
 これは、戦時中に九州大学医学部で、米軍の捕虜兵に対して行なわれた人体実験をモチーフに描かれた問題作。遠藤周作の筆力を感じるのは、手術の場面などを呼んでいると、体がよじれるような痛みを感じてしまうところ。この作品は映画かもされているが、画像で見たいとは思わない。
 「海と毒薬」というのは、タイトルとしては良くできていると思うが、なぜ、「海と毒薬」というタイトルなのか、読み終えても凡人の私には理由が分からなかった。誰か、バカにしないで教えてください。
 どうでもいいことだが、この文庫本、学生時代に薄汚い古本屋で購入したもので、いくらで買ったのかも覚えていないが、定価140円と印刷されている。昭和50年に印刷されたもの。ページの間に、九大生体解剖実験事件を伝える新聞の切り抜きが挟まっていた。こんなオマケは古本屋ならではの楽しみ。
 


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昭和の終焉 [book]

 あの日、不覚にも寝坊してしまった。あの日のことは今も良く覚えている。あの日というのは1989年1月7日、昭和最後の日である。恥ずかしながら私は当時、大学生にもなっていながら歴史のことや政治のこともよくわからなかった。でも、よくわからないなりにも、考えたい、知りたいという思いが芽生える出来事だった。寝坊して慌てて窓を開けると近所の家の前に半旗が垂れ下がっていた。
        
                たまには本を読んでかんがえなくっちゃ
 たまには、ちょっと硬い本も読まねば、と思い手にとってみた。ちょっと読むのには骨が折れる本ではあるが、昭和天皇の体調不良から葬儀に至るまでの、あまりにお加熱した天皇報道フィーバーと自粛キャンペーンを、ジャーナリストや作家が検証した内容。ネット右翼の方々に、このつたないブログを荒らされるのは本意ではないし、そんな暇はないので、内容にもあまり触れないでおくが、実に読み応えのある本だった。特に、作家・井上ひさし氏は昭和の終わりと平成の始まりをロンドンで過ごしており、英国のメディアがどのように取り上げたのかということを紹介しながら、自身の考えを述べており興味深かった。さすがに小説家だけあって、他のジャーナリストの文献に比べて読みやすかった。
 読んでよかった本。同時に、あれから18年。やはりこの国が心配。


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優しさとしての教育 [book]

 短い昼休みにはコーヒーを二杯飲む。食事とともに一杯目。そして、食後にもう一杯。そして、チョコレートをひとかけら口に入れて本を開く。30分くらいの時間が今の生活のリラックスタイム。
      
    灰谷フリークには申し訳ないが、今回はあまり響くところはなかった
 なんとなく、教会の本棚から借りてきた「優しさとしての教育」という本を読んでみた。灰谷健次郎は好きでも嫌いでもないが、学生時代の一部の熱烈なファンの学生の迎合ぶりが印象深く、それ以来敬遠気味だった。そんなことはもはや無関係だと思うが、さらっと読んでしまった。考えさせられる部分や、興味深い部分はもちろんあったけれど、あまりピンとこなかった。もはや、教える立場を退いているので、興味のないテーマだったからかもしれない。


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泥にまみれて [book]

 「男と女は違う」なんてことは誰でも知っている。しかし、その違いを的確に表現することはとても難しい。そして、見事にその違いを表現すると、とたんにベストセラーになったりする。男と女が違うということは誰もがわかりきっていることのようで、その違いを知ることは人類の永遠のテーマのようだ。
 かつてユーミンの「魔法のくすり」という曲の一節に「男は誰も最初の恋人になりたがり、女は誰も最後の愛人でいたいの」というフレーズを聞き、「へぇ」とトリビアのように考えたことがあった。オフコースの初期の作品の「もう歌は作れない」の冒頭の「僕にとって ほんのささいな 言葉のやりとりも いつも先のことばかり 考えていたから あなたにしてみれば 離れてゆくように見えたの」という歌詞も大人になって聞き直して関心したものだ。最近は(もう最近ではないか)椎名林檎の「ギブス」の「あなたはすぐに写真を撮りたがる あたしは何時も其れを厭がるの だって写真になっちゃえば あたしが古くなるじゃない あなたはすくに絶対などと云う あたしは何時も其れを厭がるの だって冷めてしまっちゃえば 其れすら嘘になるじゃない」という歌詞には心底ぶっ飛んだ。上記の三作は、私にとっては見事に男と女の違いを表現した傑作。
          
            なかなか鋭い着目点、いつか正面から反駁してみたい
 さて、約一時間で読み終えた石川達三の「泥にまみれて」という本も男と女の違いをテーマにした作品。この本はちょっと曲者だ。たぶん、20代に読んだのなら、嫌悪感を覚えたと思う。この本は筆者の夫婦論、愛情論を一遍の小説の形をとって吐露したものであるが、私の価値観、というか聖書が教えるところとは全くかけ離れている。かなり鋭く、男と女の違いを描いているが、その違いを理解し乗り越える術が、私には妥協のススメとしか思えない。たぶん、20代に読んだら「単なる男のエゴ」としか思わなかったかもしれない。しかし、着目点が非常に鋭いので説得力がある。でも、この本を読んでも結婚生活や夫婦生活に希望を持つことは難しいだろう。だがら、独身者は読んではいけない。新婚者も読んではいけない。
 この本は教会の本棚から拝借してきたのだが、はっきり言って聖書の教えとは相反する内容だ。ちょっとカタいクリスチャンなら悪書と断罪するかもしれない。そんな本がどうして教会の本棚にあるのかは不思議だが、こんな本も並んでいるということは、私が通っている教会が情報操作やマインドコントロールをするような場所ではないという証拠であると解釈しよう。
 この本に描かれている石川達三の夫婦論、愛情論に反駁するのはちょっと時間がかかる。というか、がんばって脳みそを使わなければならない。でもこの本をたたき台にして聖書の夫婦論や結婚論を展開させたら、かなり面白くなると思う。時間と脳みそがあったら、いつか取り組んでみたい。それができたら絶対面白い自信はある。


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積木の箱 [book]

 昼休みのささやかな楽しみとなっていた読書タイム。教会の本棚から拝借してきた本を少しずつ読んでいたが、三浦綾子の「積木の箱」という作品は、なんだかメロドラマのようなストーリで昼下がりの会社の休憩室で読むにはピッタリのような気もした。
        
                 ラストシーンは圧巻
 これは、初期作品らしいが、でもラストは圧巻だった。どうして、人は罪の告白に心を打たれるのだろう。真実の告白に感動するのだろう。それは、その行為が、根本的に尊いことだからだろう。神が人間に望む最も大切な事だから、キリスト教徒でなくても、聖書のバックグランドがなかったとしても、罪を認め、謝る姿に、誰も感動するのだろう。そんなことに気付かされたラストだった。


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