深い河~ディープ・リバー~ [book]
大好きな遠藤周作の晩年の秀作。異なった背景、生き様をもった人たちが、人生の意味を求めてインドを目指す。点のようなストーリーが見事に絡まってゆく手法は流石。特に、大津というカトリックの神学生が発する「ぼくが神を棄てようとしても…神はぼくを棄てないのです。」というセリフが印象的。遠藤周作のキリスト教観がこの一言に集約されているよう思える。
遠藤周作の晩年の作品を味わう
ご存知のように遠藤周作は「カトリック作家」という肩書きで語られることが多い。キリスト教色の強い作品を数多く生み出しているので、ある意味、それは必然であると思う。そして、本人もそのような使命感を持っていたとも思う。しかし、遠藤は信者ではあったが、神学者や教職者であったわけではない。にもかかわらず、その作品が作家としての評価に留まらず、神学的批評の対象にされることは有名税かもしれないが、個人的には気の毒に思える。それだけ影響力があったということだと思う。おそらく、カトリック、いやキリスト教界からの風当たりも強かったはずだ。にも関わらず、晩年まで、汎神論的な要素や輪廻転生の思想などを興味深く取り入れながら作品を発表し続けた遠藤周作のエネルギーと才能には敬服する。
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