下克上 [アルビレックス新潟]
プロとアマが一つのトーナメントで日本一を決める。それが天皇杯である。英国のFA杯をモデルに行なわれるようになったこの大会に、私はいつも注目している。Jリーグがなかった頃、テレビでサッカーが見られるのは元日の天皇杯くらいだった。
さて、権威あるこの大会も、ここ数年改善点が目立ち始めているように思える。元日決戦のためには、この日程しか考えられないのかもしれないが、優勝争い、残留争い、昇格争いの最中にあるチームは、3回戦、4回戦には力を注いでいないと感じられるフシがある。今年も、昇格争いをしているJ2の上位4チームは初戦敗退となった。
そして、集客の問題もある。そもそも大会の告知などのアピールが足りない。会場が全国各地に点在し、ホームタウン制のJチームのサポーターは応援しにくい。主催の違いでシーズンパスが使えないなど、会場に足を運びにくい要素がたくさんある。
4回戦から登場となったアルビレックス新潟はビッグスワンでJ2のサガン鳥栖との対戦。なかなか見れないJ2のチームを見ることができるのも天皇杯の楽しみ。鮮やかなブルーのユニ、キーパーはピンクというのが、いかにもJ2仕様(失礼!)新潟はGKの北野が黄色いユニだったのが新鮮。ただ、黄色のシャツの時は失点が多いというジンクスがあるが・・・。
黄色いユニのGK北野はホームでは新鮮
普段は4万人のサポーターを集める新潟も、天皇杯は毎年1万人弱。今日は天気も良く、面白い大会なのに何故集まらないのだろう。チケットの売れ行きが悪かったせいか、自由席は二階が閉鎖され、一階席はすし詰め状態。キックオフ直前に二階席が開放されたが、手際の悪さを感じる。
試合は、いきなり坂本の先制ゴールで始まる。ゴール付近での鳥栖の不用意なパスをカットしそのままシュート。こんなミスをするところがJ2らしいと余裕で眺めていたのが間違いだったようだ。その後、目が覚めたかのようにスピーディなサッカーを展開する鳥栖に新潟は翻弄される。ボールを持った選手には、かならず、複数のマークがつく鳥栖。とにかく走り続ける。同点弾、逆転弾を立て続けに目の前のゴールに叩き込まれる。その後も簡単に裏を取られフリーで打たれまくる新潟。何点取られてもおかしくないような展開。新潟は明らかに動きが遅い。判断も遅い。ベストメンバーで相手は昇格の可能性も、J1経験もない鳥栖なのに。なんとか1-2で前半終了。しかし、この時点ですでに大ブーイング。
後半は開始早々、攻め上がりちょっとだけ期待したが、鳥栖のFW金のワールドクラスと思えるミドルシュートが突き刺さる。なんと1-3。ここで新潟はメンバー交代。これが功を奏し、変わったばかりのFW河原がファーストタッチのヘディングシュートを叩き込む。その後、新潟が波状攻撃をしかけるが、引いて守る鳥栖を崩すことができず、攻め疲れのまま、良いところなくタイムアップ。
試合後は大ブーイング
試合終了後、怒りと不満が飽和したゴール裏は不穏な空気に包み込まれ、野次と怒号とブーイングの嵐。選手が挨拶に来る前に横断幕も応援旗も撤収され、異様な空間と化した。
サッカーは他のスポーツに比べて点を取るのが難しい。だから、オリンピックで日本がブラジルに勝つような出来事が起こる。これがサッカーの怖さでもあり面白さでもある。毎年、天皇杯では格下のチームがJ1のチームを倒すという下克上が起きる。これも天皇杯の魅力である。しかし、毎年のようにこの大会でJ2チームに負ける新潟はなんとかならないのだろうか?
今日の鳥栖のサッカーは素晴らしかった。金選手の二本のシュートも美しかったが、良く走り、しっかりマークするサッカーは本来、新潟がやるべきサッカー。今日の鳥栖は間違いなくJ1で通用するレベルだった。しかし、J2で中位に甘んじているというのは、コンスタントに今日のようなサッカーができていないということだろうか?しかし、鳥栖のサッカーはなかなか魅力的だった。来年こそはJ1昇格を果たして欲しい。
一方、今日の新潟は最低だった。90分、つまらないサッカーを続けてしまった。負けたことも悔しいが、内容が酷すぎた。今季の残り試合はあと4試合。ホームは2試合だが、シーズン前半のような、新潟らしいサッカーで今日の試合を帳消しにして欲しい。
通算観戦成績10勝6敗5分。
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